これからWebデザイナーとして飛躍したい、仕事を受注していくための準備をしている方に向けて、クライアントワークに活かせるヒアリングシートについて詳しくご紹介します。
プロのWebデザイナーが必ず使う魔法のツール「Webデザインヒアリングシート」はWebデザインを仕事にするうえでなくてはならないツールの一つですが、実際にどんなことをヒアリングするのかご存じですか?
はたまた、「ヒアリングシート」って何?と思った方、ご安心ください。この記事を読めば、どうしてそんなに大切なのかも分かるようになります。
少しだけ先にご説明すると、Webデザインヒアリングシートとは、クライアントの要望や目的を効率よく聞き出すための質問リストのことです。
簡単に言えば、「お客様の夢を叶えるための設計図」みたいなものですね。
私の利用しているヒアリングシートもご紹介します!
この記事では、ヒアリングシートの重要性から作り方、使い方まで、実例を交えながらご紹介しますので、ぜひご準備してみてください。
Webデザインに必須!ヒアリングシートの重要性
「え?そんな面倒くさそうなものを使わなくても、なんとなく話を聞けばいいんじゃない?」
そう思いますよね。クライアントの相談を受けて、何度なくどんなサイトにしようかなと考えながら、打ち合わせを進めていく……。
始めはこんなスタートをする駆け出しWebデザイナーさんも少なくありません。
ですが、ヒアリングシートを活用しながら打ち合わせをすることで、さまざまなメリットがあるのも事実。その重要性を理解すれば、きっと明日からヒアリングシートをつかいたくなるはずです。
クライアントとデザイナーの認識のギャップを埋められる
クライアントワークに必要不可欠なヒアリングシート。
想像してみてください。あなたが「シンプルで洗練された」デザインを提案したのに、クライアントが「もっとポップで賑やかな」ものを期待していたら…。
出来上がった制作物を見て、クライアントの反応はどうでしょうか。
……ゾッとしませんか?
ヒアリングシートで相手がどんなデザインを求めているのか、イメージに近い参考資料なども双方で確認ができれば、そんな悲劇は避けられます。
口頭や頭の中のイメージを視覚的に確認できるものがあれば安心です。
プロジェクトの方向性がクリアに
「このサイト(その他制作物でも可)で何を達成したいですか?」という質問一つで、プロジェクトの目的ははっきりします。
売上アップ?であれば、購買意欲に訴求するデザインや、少ないアクションで購入につながる動線を意識することができます。
また、ブランドイメージの向上が目的であれば、コンセプトや色使いなど、世界観を大切にしたデザインを提案することができます。
はたまた新規顧客の獲得かもしれません。クライアントがWeb制作を依頼したい目的と理由が明確になれば、デザインの方向性も決まりやすくなります。
効率的な情報収集と整理ができる
お互い貴重な時間をすり合わせて行う打ち合わせ。
ヒアリングシートがあれば「あ、これ聞き忘れた!」なんて後悔も減らすことができます。
あらかじめ聞きたい内容を決めておき、打ち合わせまでにお互いが情報共有できていれば、必要な情報を漏れなく集められるため、後々の手戻りも減らせます。時間とストレスの節約にもなりますね。
クライアントにとっても、ヒアリングシートに記入することで、潜在的なニーズを知ることができたり、目指すゴールを明確にできるメリットがあります。
ヒアリングシートは単なる質問リストではなく、プロジェクトを成功に導くための羅針盤でもあります。
使いこなすことで、お互いがストレスなく情報共有することができるようになります。
あとから何度も確認できたり、要点をまとめて再質問するときにも重宝します。
ヒアリングの目的と効果
では、ヒアリングシートの重要性が分かったところで、次はこのツールを使って具体的に何を達成できるのか、掘り下げていきます。
現状と問題の把握
まず大切なのは、クライアントの現状と抱えている問題を理解すること。
例えば…
既存サイトの訪問者数が少ない
商品の魅力がいまいち伝えられていない
競合他社と比べ、ブランドイメージが弱い
などなど。
こんな悩みをヒアリングシートで拾い上げることで、あなたがWeb制作という仕事を通じて解決すべき課題が明確になります。
クライアントの要望の理解
「こんなサイトにしたい!」というクライアントの夢や要望を聞き出すのも重要です。
スマホで見やすいサイトにしたい
もっと商品を大きく目立たせたい
問い合わせフォームをシンプルに
ヒアリングシートから、こういった具体的な要望を把握することができれば、クライアントの期待に沿ったデザインを提案しやすくなります。
新たな視点の提案
ここがプロのWebデザイナーの腕の見せどころ!
クライアントが気づいていない新しい可能性や潜在的なニーズを掘り起こし、提案できるチャンスです。
例えば、ECサイトのリニューアルの相談を受けたとき、「インスタグラムとの連携で若い層の集客が見込めますよ」なんて提案ができれば、クライアントの目も輝くはず。
提案ができるWebデザイナーに成長できれば、単発のサイト制作にとどまらず、インスタ運営の代行や、サイト運営の継続案件などの仕事にもつながるチャンスです。
プロジェクトの目標設定
また、ヒアリングを通じて、具体的な数値目標を設定するのも大切です。
月間のサイト訪問者数を2倍にする
問い合わせ数を30%増やす
直帰率を50%以下にする
こういった明確な目標があれば、デザインの効果を測定しやすくなります。
測定にはGA4との連携や計算などの知識も必要ですが、お互いが同じ目標を持つことで、一体感が生まれるだけでなく、お互いに協力しながら良いものを作り上げていこうという気持ちにもなります。
予算とスケジュールの調整
最後に忘れてはいけないのが、現実的な予算とスケジュールです。
予算は〇万円以内で
3カ月以内にリリースしたい
のような、制作における制約を事前に把握しておくことで、実現可能な提案ができます。
「素晴らしいけど予算オーバー…」
「スケジュールが押して、予定通りに公開ができなかった」
なんていう悲しい結末は避けられます。
ここまでのポイントを押さえたヒアリングができれば、クライアントとの信頼関係も深まり、プロジェクトの成功率もグッと上がります。
※制作金額については、金額やプランを提示して相手に費用感を伝えることも大切です。
相手を知り、どうサポートしていくかを具体的に決めていくことができます。
ヒアリングシートに含めるべき重要項目
では、いよいよヒアリングシートの中身を考えていきましょう。
ただ単に聞いていくのではなく、押さえておくべき10の重要項目を紹介します。これさえ押さえれば、プロ顔負けのヒアリングシートの完成です!
学習段階の方は、ご自身で架空の情報を書き出して、架空サイトを作ってみると練習にもなります!
私自身も、この10項目は必ず確認しています。
1. クライアントの基本情報
まずは基本中の基本。クライアントの会社名、担当者名、連絡先などです。些細なことに思えるかもしれませんが、これがないと後々困ることに…。
例:
- 会社名:株式会社ウェブデザイン
- 担当者名:山田太郎
- 連絡先:yamada@webdesign.co.jp
2. 事業内容と競合他社
クライアントのビジネスを理解することは、適切なデザインを提案する上で不可欠です。
例:
- 事業内容:オーガニック食品のEC販売
- 主な競合:A社、B社、C社
3. Webサイトの目的とコンセプト
なぜWebサイトを作る(または改善する)のか。その目的を明確にします。
例:
- 目的:商品の認知度向上と売上増加
- コンセプト:「自然と共に生きる喜び」を伝えるサイト
4. ターゲット層
誰に向けてWebサイトを作るのか。これを押さえないと、的外れなデザインになってしまいます。
例:
- 年齢層:30〜50代
- 性別:女性中心
- 特徴:健康意識が高く、家族の食事に気を使う主婦層
5. デザインの方向性
クライアントが好むデザインテイストを把握します。
例:
- 希望のイメージ:ナチュラルで温かみのあるデザイン
- 参考にしたいサイト:https://www.example.com
- 避けたいデザイン:過度に派手な色使い
6. コンテンツと機能要件
サイトに何を載せるか、どんな機能が必要かを確認します。
例:
- 必要なページ:トップ、商品一覧、商品詳細、About Us、お問い合わせ
- 特殊な機能:商品検索、レビュー機能、ニュースレター登録
7. 技術仕様
サイトの技術的な要件を確認します。
例:
- 対応デバイス:PC、スマートフォン、タブレット
- 使用CMS:WordPress
- 対応ブラウザ:Chrome、Safari、Firefox、Edge
8. 素材と資料の提供
必要な素材の有無を確認します。
例:
- ロゴ:あり(AIファイルで提供可能)
- 商品写真:プロカメラマンによる撮影が必要
- 会社案内:PDFで提供可能
9. 予算とスケジュール
現実的な制約を把握します。
例:
- 予算:100万円以内
- 希望納期:3ヶ月後
- 中間チェックのタイミング:1ヶ月後と2ヶ月後
10. 運用・保守計画
サイト公開後の運用方針を確認します。
例:
- 更新頻度:週1回程度
- 更新担当:社内の担当者
- 保守契約:初年度は必要
これらの項目をカバーしたヒアリングシートを用意すれば、プロジェクトに必要な情報をしっかり押さえることができます。
でも、ただ項目を並べただけでは不十分。次は、より効果的なヒアリングシートの作り方を見ていきましょう!
効果的なヒアリングシートの作成方法
ヒアリングシートに盛り込むべき項目はわかりました。
でも、ただ質問を羅列しただけでは、効果的なヒアリングはできません。ここでは、クライアントの心をつかむヒアリングシートの作り方を紹介します。
わかりやすい言葉遣いと構成
まず大切なのは、クライアントにとってわかりやすい言葉を使うこと。専門用語をバンバン使っても、相手が理解できなければ意味がありません。
悪い例:
「レスポンシブデザインの実装において、ビューポートの設定は必須ですか?」
良い例:
「スマートフォンでの表示を自動で最適化する機能は必要ですか?」
また、質問の順序も大切です。一般的な質問から具体的な質問へ、簡単な質問から複雑な質問へと順番に並べると、クライアントも答えやすくなります。
多様な回答方法の用意
クライアントが答えやすいように、回答方法にも注意して作成しましょう。
- 選択式:「はい」「いいえ」や複数の選択肢から選ぶ
- 記述式:自由に記入してもらう
- スケール:1〜5段階で評価してもらう
例:
「サイトのデザインテイストについて、以下のどれが近いですか?(複数選択可)」
□ シンプル □ モダン □ クラシック □ ポップ □ その他( )
「現在のサイトの満足度を1〜5で評価してください(1:非常に不満 5:非常に満足)」
1 2 3 4 5
質問の内容に応じて適切な回答方式を選ぶことで、より正確で豊富な情報を得ることができます。
ビジュアル要素の活用
文字ばかりのヒアリングシートは、クライアントにとって退屈で答えるのが億劫になってしまいます。ビジュアル要素を活用するなど、より親しみやすく、答えやすいシートを作りましょう。
- カラーパレットの選択肢を実際の色で表示する
- デザインの参考例を画像で示す
- ロゴのサイズや配置のオプションをイラストで表現する
例えば、「ご希望のカラーイメージに近いものを選んでください」という質問に対して、実際のカラーパレットを示すことで、クライアントはより直感的に好みを伝えられます。
こうしたビジュアル要素の活用は、コミュニケーションをスムーズにし、クライアントとデザイナーの認識のズレを減らすことができます。
ヒアリングの進め方とテクニック
シートさえあればOK…というわけではありません。
ヒアリングシートを参考にした打ち合わせ・ヒアリングの進め方次第で、得られる情報の質が大きく変わってきます。
ヒアリングシートの事前記入依頼
ヒアリング当日の前に、クライアントにシートを送って記入をお願いしておくとスムーズです。
メリットとしては
- クライアントが事前に考える時間を持てる
- 打ち合わせをスムーズに進められる
などがあります。
クライアントも、「Web制作が初めての方」や「知識のある方」など様々な方がいらっしゃいます。
記入は「できる範囲で結構です」と一言添えるだけで、クライアントの負担感は大きく減りますので、ぜひお伝えしてみてください。
対面・オンラインでのヒアリングの実施
可能であれば、対面でのヒアリングがベストです。
ですが、タイミングが合わない場合や、遠方の方とやり取りする場合、オンラインでも工夫次第で効果的なヒアリングは可能です。
出来る限りコミュニケーションをとれるように、カメラをONにしてもらい、画面共有などを活用して情報を共有しながらヒアリングを行いましょう。
傾聴の重要性と質問の仕方
ヒアリングの最大のコツは「聞き上手」になること。もちろん質問や提案をする必要はありますが、相手にたくさん話してもらい、ヒアリングシートに記載されていないような情報も聞くことができればいいですね。
- 相手の話を遮らない
- 相槌や共感を示し、傾聴の姿勢で聞く
- 曖昧な回答には「どのような○○ですか?」と掘り下げる
などを心掛けてみてください。
フォローアップ質問の活用
ヒアリングシートに載っていない質問でも、話の流れで重要そうな情報が出てきたら、躊躇せずに掘り下げて聞いてみましょう。
例:
クライアント:「うちの商品は、実際に見てもらうとよさがわかるんです」
あなた:「なるほど。では、商品の動画や360度ビューなどを掲載する機能があると良いかもしれませんね。そういった機能についてはどうお考えですか?」
このように、クライアントの発言をきっかけに新しいアイデアを提案することで、より深いヒアリングができます。
まとめ
Webデザインヒアリングシートの魅力が伝わりましたか?
クライアントの希望や考えを聞くシンプルなツールですが、クライアントワークを成功に導く魔法のシートでもあります。
クライアントのニーズを的確に把握でき、プロジェクトの方向性が明確になるだけでなく、私たち制作者側にとっても効率的な情報収集に役立ちます。
また、デザイナーとクライアントの認識のズレを防ぎ、信頼関係構築にも役立ち、クライアント自身も自社の目標を整理できるメリットがあります。
これからクライアントワークを始めたい方、なんとなくヒアリングしてしまっている方は、ぜひ戦略的なヒアリングシートを作成して、活用してみてください。